無から有は生まれない

 そのために、<犠牲>は必要

 <犠牲>があるから有は在る

 常に有を生み出す我等が<犠牲>をなくそうなど、無理な話

 

 

 「なぁ、シュタイン」

 「なんですか? せんぱい」

 

ある晴れた日の午後、ベンチに二人は座っていた。

青色の空に映える白い雲は風に流され、視界から消えていく。

 

 「なんでもねぇよ」

 「先輩がそう言う時は何かありますよ」

 

シュタインは煙草を消し、微笑した。スピリットもそんなシュタインの表情を見て笑った。

 

 

 「流石だな。──お前に、何もしてやれない自分が嫌なんだよ」

 「俺は先輩が側にいるだけでいいですよ。ベタですが」

 「だな」

 

ある晴れた日の午後に平和な時間が訪れた。

 

まるで、<平和>を誰かが喰い、<不幸>を生み出そうとしているようだ。

 

end